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2015年09月01日

藤田病院長「PET検査の有用性とFIMACCの展望について」

 

第一内科長 藤田次郎先生の琉球大学医学部附属病院長就任に際して、「PET検査の有用性とFIMACCの展望について」掲載いたします。

PET検査の有用性は「一度に全身を診られる」「正確なステージングの把握」「早期発見」等

私は岡山大学医学部を卒業後、虎の門病院内科レジデント、そして、国立がんセンター内科レジデントとして数年携わってきました。その当時は、どのようにがんを診ていくかといいますと、人の全身像のスタンプを押すという作業が必須でした。私たち臨床医が診なければいけないのは、そのスタンプを押した時に、どこにがんがあるかということです。私は呼吸器の医師ですので、特に肺がんを中心に診ていましたが、今ではこのような作業は不要となりつつあります。

現在、PETを使用して人体像を診るようになりましたが、当時と比較するとこれは大変大きな進歩で、診療当初から全体像が把握できるということは、本当に信じられないことです。レジデントの頃は「必ず全身を把握しろ。がんは全身病だから」と教えられ、常にそれを意識していました。

PET検査の素晴らしい点は、一度に全身が診られることです。しかも一度の検査でかなり正確なステージングがわかります。特に肺がんの場合は、転移を有する患者さんが多いため、そういう点では、全身像が把握できて病気の予測ができ、さらに、これまでは様々な検査を組み合わせていたステージングが一瞬にしてわかる点、これは素晴らしいことです。そして、病気の流れがわかるという点も非常に大きな利点です。

また、PET検査のない時代から、放射線科の村山教授をはじめとする放射線科医、内科医、外科医、病理の先生方と、2週間に一度、呼吸器疾患の診断と治療の合同カンファレンスを行っています。PET検査ができる以前は、CTを診ながら、がんなのか、がんではなく結核なのか、といったカンファレンスを行っていましたから、PET検査で一瞬にして、「これはがんでしょう」と診断できるようになった点も大きな変革です。以前でしたら、「これは炎症かもしれないから1ヶ月、2ヶ月様子を見ましょう」というような病変でも、今では経過観察ではなく、必要であればすぐ手術することができます。そのような事例はこれまでにも何例も経験しています。これは本当に驚きです。私はこの驚きを沖縄の病院の先生方に伝えたいと考えています。PET検査により早期診断が可能になることで、治療成績も向上しますので、外科医にとっても朗報だと思います。

沖縄県内へのPET検査の認知アップと、読影技術の向上

30年間、肺がんの臨床医として診療に携わってくる中で、これまで何度も大きな技術革新を見てきました。単純写真が出始め、CT、エコー、MRIといった様々な技術革新によって、治療も大きく変わってきました。そして、この細胞のアクティビティを、機能を診るというPET検査が入ってきたことも大変驚異に感じました。

私は、琉球大学医学部附属病院の病院長として、この病院の中にFIMACCがあることは、とても素晴らしいですし、ありがたいことだと思っています。私は現在、FIMACCの意義を伝えるために、沖縄の様々な病院を回って、その有効性を伝えています。たとえば、消化器科医は胃のがんについては診断でき、ある程度把握はできますが、転移の有無を調べるためには、様々な検査が必要です。PET検査を活用することにより、全身像を把握することができ、しかも正確なステージングもわかりますから、「PETを使いましょう」いうことを推奨させていただいています。特に沖縄県は日本でも肺がん手術が多い県です。FIMACCのPET検査と私ども琉大の放射線科の持っている技術、PETを有効活用したステージングの的中率、それに病理との対比など、今後リサーチするべき課題はたくさんあります。

更に広がるPET検査の活用領域の有効活用と、国際医療拠点としての新しい治療・診断を目指して

PET検査のメインは悪性疾患、がんということですが、平成24年から心臓のサルコイドーシスに対しても保険適用がされています。沖縄県にはサルコイドーシスの患者さんも非常に多く、特に心臓のサルコイドーシスにPET検査は有用で、どこに病変があるのか、ということが診断されることによって、不整脈の予測ができます。そして、サルコイドーシスの中でも、心臓のサルコイドーシス、神経のサルコイドーシス、そして、私の専門の肺のサルコイドーシス、この3つはステロイドの適用ですが、中でも心臓のサルコイドーシスは一番怖く、これには突然死があります。不整脈も含めて正確に把握し、治療につなげていけると考えています。

そして、今後はPET検査の様々な臨床、心サルコイドーシス、認知症、脳機能なども含めて診ていけると思います。最近の琉球大学医学部附属病院のトピックとしては、この6月からロート製薬のご協力によって再生医療研究センターがオープンしました。ここに最先端の技術とエネルギーが集まってきています。また国際医療拠点のひとつとしてのキャッチフレーズに移植医療を挙げていますので、PET検査のFIMACCと、再生医療研究センターがうまく連携し、将来的には琉大病院の新しいオリジナルな治療、診断を目指していきます。

国際医療拠点形成に不可欠なPET施設 FIMACC。そして沖縄全体での海外の方への診断や治療の可能性

今後、FIMACCが沖縄県民にとって役に立つ施設ということが認知いただければ、国際医療拠点形成において、市民権を得たPET施設は不可欠です。医療の複合体として考えていく際、臨床医として、今後、医療が飛躍的に進歩していく中で、テクノロジーとして、エコー、CT、MRI、そして、その中の一環としてPET検査が加わることによって、技術革新が速度を増し、診断も変化していくと考えています。

次の視点としては「メディカルツ-リズム」です。これは国が推奨する事業ですが、沖縄県での健診が飛躍的に増える可能性があります。沖縄全体で「メディカルツーリズム」を考え、3か所のPET施設を大きくひとつとして考え連携し、PET健診をメインに日本の最先端技術のハード面と、きめ細やかなハートの部分、「人へのやさしさや正しさ」といったソフト面で、海外の方にも適切な診断や治療を行っていく可能性も探っていきたいと考えています。

【藤田次郎病院長プロフィール】
琉球大学医学部附属病院長 第一内科長。 
1956年生まれ。香川県高松市出身。岡山大学医学部卒。米国ネブラスカ医科大学呼吸器内科留学などを経て、2005年に琉球大学医学部第一内科教授に就任。2010年から琉球大学大学院第一内科教授。2015年4月1日病院長に就任。
趣味:医学書作り。  
特技:論文を書くスピードが速いこと。
マイブーム:パワースポット巡り。  
座右の銘: 愛と和と創造(香川大学医学部・恩師の言葉より)