2015年10月16日
2015年9月4日(金)〜9月6日(日)の3日間、東京ベイ舞浜ホテルクラブリゾートにて、「PETサマーセミナー2015 in東京ベイ」(大会長 坂井修二氏 東京女子医科大学 画像診断・核医学科)が開催されました。
「次世代への~絆~」をテーマに、4年前の東日本大震災の爪痕が残ったままの現実、PETや核医学の技術や知識を英知として、次の世代の医療従事者に伝承していくことを再確認していくこと、さらにPETや分子イメージングを背負って立つ次世代の担い手の育成の場にという想いが込められたサマーセミナーでした。
セミナーの内容においては、PETに携わる医師やメディカルスタッフ、さらには学生や前期研修医の方々に広くPETや分子イメージングの素晴らしさを幅広く知っていただく機会となっており、PET(陽電子放出断層撮影)にかかわる方々に広く門戸を開いています。
毎年1回、8月末から9月にかけて開催されるPETサマーセミナーは、PETに携わる医師や薬剤師、診療放射線技師、看護師、研究者、技術者、事務職、経営者といった方々、そのほか、加速器(サイクロトロンなど)や放射性薬剤の合成装置、PETカメラや周辺機器および画像診断処理ソフトなどのメーカー、PET施設の設計や放射線管理に関係する企業など、多方面の方々が参加されるセミナーです。
PETサマーセミナーにおいては、PETの技術開発と臨床応用や研究利用はもとより、品質管理や精度管理、安全管理と法制度だけではなく、運営や経営といった幅広い分野に関し視点を広げ構成されています。そして、特に教育プログラムにも注力し、医師のみならず、技師、看護師、事務職の方々にも支持を得ているセミナーです。
会場の外には、企業展示スペースとして数多くの展示が並び、PETに関する様々な製品の紹介がされ、にぎわいを見せていました。診断はPET検査での様々な医療機器や技術が複合することによって成り立っている技術ということが見受けられた場ともなっていました。
会場は第1~第4に分かれており、それぞれの会場で細かい分野での取り組みや発表が行われて、昼食時には医療機器メーカーごとにランチョンセッションも開催されていました。
第1日目は、メーカーズランチョンセミナー後、3つのイブニングセミナーが行われ、その中のひとつでは、ヴェルツブルク大学・ドイツ心不全センター 樋口隆弘先生の「心臓PETイメージングの未来」という興味深い演目のご講演が行われていました。
19時以降はPETサマーセミナーの看板ともなっている「夜の学校」が開催され、ラフな服装でビールや水割りを片手に、自由な雰囲気の中で「臨床」「技術」「薬学」「看護」などといったカテゴリー別での様々な意見交換がありました。
2日目の5日は、それぞれの分野での発表が行われ、昼食時のランチョンセミナーをはさみ、「サイクロトロン廃棄」や「PET/MRI検査」「FDG以外のトレーサー(薬剤)」といった幅広い分野の12のセッションが開催され、どのセッションも多くの医師や医療関係者が出席されていました。
また、2日目以降には、この大会の趣旨のひとつでもある育成としての、ビギナーズコースも設けられており、PET検査について初心者向けの内容の発表も盛んに行われていました。PETに関する基礎知識等に関して、単純に機器が最新のものであっても、実際にはそれを見て判断する医療従事者の能力が不可欠であることの重要性も含めた内容でした。
PET検査は、医師、薬剤師、医療放射線技師、看護師、事務職、技術者等と様々な職種に携わる者がその専門領域で関わり、ひとつの検査を行っていくというチーム医療の最たるものだと述べているセッションもあり、様々な技術の集合体ということを改めて考えさせられたものでした。
最終日の6日には、全国から集結した、数多くの医師や医療関係者が登壇し、様々な視点からPETに関する演題の発表が行われ、この日、FIMACC千葉副センター長も「経営」について発表しました。
「経営」についてのセッションでは3施設からの発表が行われ、FIMACCからは千葉副センター長が講演を担当しました。千葉副センター長は、「国内初 PPP方式によるPETセンター開設から3年でみえてきたもの」と題し、PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)/BOT(ビルド・オペレート・トランスファー)方式でのFIMACC設立によって、大学病院だけでは実現できなかった部分や施設運営のノウハウを得ることが可能であるといったメリット面や、契約の取り決めのなどの協力関係の面に関しての発表を行いました。
武蔵村山病院画像診断・PET センターの原澤先生からは「事業支援サービスを受けた医療法人病院のPET診療-10年にわたる経営的側面からの報告-」、次世代分子イメージング つくば画像検査センター佐藤先生からは「つくば画像検査センターにおけるPET検査の現況と問題点」ということで、どういった経緯での設立であるか、その契約形態や現在に至るまでに成功されたこと、ご苦労されたこと、現在抱える課題等に関して発表されました。
経営に関しては、PET/CT装置が非常に高額であり、導入方法についてそれぞれの施設の運営や契約方法も様々であり、内容等によって、メリットやデメリットも多く存在しているという点の理解が深まった発表でした。
そのほか、一般演目の発表、「PET検診の将来像を探る」「内部被ばく」等のセッションも展開され、参考となる充実した内容のセミナーとなっていました。
3日間を通じて、PET/CT検査は最先端の医療機器と高い技術と知識があってこそ、患者様への負担の軽減だけではなく、さらに多くのメリットもあり、様々な治療に役立っていくことが期待できます。FDGに関してはもちろんのこと、「アミロイド」関連等のFDG以外の核種も目立ち、撮影機器もPET/MRIの発表も多くなり、PET自体の検査技術の進化も見ることができました。しかし、その中でサイクロトロンの廃棄や、施設自体の閉鎖問題が5~10年先にピークを迎えるといった課題も関心が集まっていました。
今後は安定した検査数やPET検査自体が、CTやMRIのように検査できる機器のひとつとしての広報活動が重要であるとの見解が多く見受けられました。
今回、PETの臨床の場においての必要性、有用性について、経験豊富な医師や医療従事者の生の声を聴く場としてとても貴重なセミナーでした。学んだことは、今後の運営に生かし、より質の高い医療サービスを提供できるように努めてまいります。