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2017年08月03日

沖縄における豊かな発想と伝統の融合をめざして

 

FIMACCの施設には、数々の調度品や装飾品が飾られています。中でも応接室に飾ってある円錐形のオブジェは、清い不思議な雰囲気を醸し出しています。また、壁に飾られている、「青の静寂」は美しい沖縄の海の色を彷彿させてくれる作品です。今回、こちらの作品の作者である、陶芸家の伊是名淳さんに、リウボウに出店中のところにおじゃましてお話をうかがってきました。

自分らしさを出す、それが沖縄の物作りだと考えています。

VIVACEを拠点に国際的に活躍する陶芸家 伊是名淳さん。もともとは中学校美術教諭でしたが、2008年には陶芸家としてアパレルブランドYOKANGの田仲洋氏と染物と陶芸を融合させたデザインユニットTHAIを結成。THAIとして同年12月に沖縄デザイン戦略構築促進事業へ参加し沖縄展示会出展した経歴をお持ちです。2010年に開院の豊見城中央病院附属健康管理センター全フロアのアート制作も手掛けています。個性あふれた存在感のある作品の数々を発表しています。

―― 現在のお仕事についてお聞きしたいのですが。――

「私自身は陶芸作家であり、会社の代表として様々な事業展開をしています。2年前からは本格的に紙でできたアクセサリー『ペーパージュエリー』のプロデュースをしています。現段階では紙ありきで紙に合わせたデザインをしていますが、今後は沖縄の素材を活用したオリジナルの紙の制作も検討しながら、海外進出も視野に入れています」

―― 作品を作る際にはどのようなこだわりなどがありますか。 ――

「沖縄には見えないものを大切にする文化があり、私はデザインを考え、それにマッチした手法で作品を作っています。ですが、今の時代はあまりにも進歩して、見えないものとの共存の考え方が現実の生活とマッチしない場面が多いように感じています。そのため、沖縄の精神的な部分と現代生活を新たな発想で組み合わせた作品を作り出すことをめざしています」

―― FIMACCに飾られている作品についてはいかがですか? ――

「沖縄のFIMACCさんの円錐のオブジェは、沖縄の精神世界に寄せたデザインで、盛り塩をイメージして作った作品です。私は常に沖縄とどうやってかかわっていくかを考えています。なぜかというと頻繁に「沖縄らしさ」について聞かれますが、実はそれはとても奇異な質問で、ほかの県ではあまり聞かれない質問だと思うのです。土にしても紙にしても、なんにでも沖縄らしさを求められることが多く、それを自分なりに分析したのですが、沖縄は本土に比べて昔から情報や物がない場所なので、なんでも自分たちの手で作ることを余儀なくされてきました。一見デメリットに聞こえるこの事こそが、その結果DIY精神が培われ、ない物を誰かに依頼するのではなく、自分たちで作る文化と歴史が出来上がったのではないかと。それが『自分らしさに(アイデンティティー)』繋がり、これこそが『沖縄らしさ』だと思うのです」

様々な特徴を活かした紙を使用した、非常にデザイン性の高い繊細なアクセサリー ペーパージュエリー

―― 現在、全国で展開中の「ペーパージュエリー」について教えてください。 ――

「ペーパージュエリーは、様々な特徴を活かした紙を使用した、非常にデザイン性の高い繊細なペーパーアクセサリーです。耐久性や耐水性に優れた特殊な紙を使用しているので、汗をかいても破れにくく、乾かすことによって繰り返し使用することが可能です。万が一、少し破れてしまっても、紙の長所を利用し自分流にカットするというような応用が利くことも特徴のひとつです。耐久性も強いので、接着剤を使ってネイルアートのようにラメやスワロフスキーを乗せたアレンジも楽しめます」

―― 紙によっては革素材のような質感のネックレスに見えるものもありますね。 ――

「これは実際、紙の繊維と革の粉末を、紙を作る段階で混ぜています。ほかにも多少ハリを出すためにアクリル樹脂が練り込まれている紙も使用しています。すべて市販の紙を使用しているのですが、用途としてはとても珍しい使い方をしているので、メーカーさんも驚いています」

―― もともとの発想は、デザイナー自身が金属アレルギーであったためとうかがいましたが。 ――

「はい。デザイナー自身が金属アレルギーを持っていたため、ノンアレルギーのアクセサリーを作る事ができないかと考えた事が発想の原点です。まず紙を5千種類以上取り寄せ、その中から、紙の弱点になる部分を排除した耐水性、耐久性に優れた紙を探し出し、その想いは実現しました。そして、6種類のネックレスを発表したところ"金属アレルギーの方に朗報です"といった形で、沖縄県内の全メディアに取り上げられ、話題になり注目を集めました。今では、13種類とそれに合わせたピアス、私がデザインした男性向けのポケットチーフがあります」

―― 今後の展望を教えてください。 ――

「現在、21の沖縄発のブランドを集めた「アパートメント沖縄」という組織を仲間達と立ち上げ、そこでディレクターをしています。沖縄発のブランドを束ねて、窓口を1つにして組織を作ることにより、提携先とのやり取りが簡素化される事でますます県外に発信していくチャンスも多くなればと思っています。ペーパージュエリーについては、以前、ロンドンでの展示会に出展した際、とても好評だったり、きり絵作家の展示会にもブース出展の機会をいただいたりと、活動範囲も広がっています」

陶芸のみならず、幅広い活動で多くの人を楽しませてくれる伊是名さん。今後の活動に目が離せません。ご活躍を期待しています。

プロフィール

伊是名 淳

伊是名 淳

1970年1月27日 O型

那覇市首里生まれ。九州産業大学 芸術学部デザイン学科卒業。中学・高校美術教員(〜2001年)。"活き活きとした暮らし"をコンセプトとしたカフェ・エステ・ショップ・陶芸工房・クッキングスタジオからなる複合ビルVIVACEを設立。全プロデュースを手掛ける。デザインと機能性に優れたユニバーサルカップ(特許取得作品)を制作。ファッションブランドYOKANGの染色家 田仲 洋氏とDesign Unit THAIを結成。染物と焼物を融合させた作品をデザイン・制作。2010年、豊見城中央病院附属健康管理センター全フロアのアート制作をTHAIで手掛ける。2012年、東京(+case gallery)にてDesign Unit THAI 個展を開催。LOOCHOO展 in ロンドンにて「BORN RYUKYU SERIES」を展示。リーガロイヤルグラン沖縄の全ルームプレート及びアート制作を手掛ける。

◆VIVACE 
http://www.vivace-life.jp/

◆ペーパージュエリー
http://www.paperjewelry.jp/