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2017年08月04日

長寿ブランド復活へ。沖縄県の健康管理を担う協会けんぽ

 

今回、全国健康保険協会(協会けんぽ)沖縄支部の支部長である宮里博史氏に、協会けんぽの役割、活動、沖縄県ならではの取り組みや今後の課題についてうかがいました。

沖縄県は全国では一番低い一人当りの医療費

――― 最初に協会けんぽについて教えてください。

日本の健康保険制度は、国民健康保険、共済組合、後期高齢者医療制度、健康保険組合、協会けんぽといった縦割りの制度になっています。その中で企業にお勤めの方で、健保組合以外で74歳以下の方は協会けんぽが担当しています。以前に中小企業などで働く従業員やその家族の方々が加入されていた、いわゆる政府管掌健康保険は、旧社会保険庁が担当していました。それが平成20年10月から新たに全国健康保険協会が設立され、そのまま、その業を引き継いで協会けんぽが運営することになりました。保険事業、保険給付、保険料率の設定、医療費の適正化、加入者の健康づくりなどが主な業務です。

東京に本部があり、各都道府県に支部を置いて、運営については地域事情があるので、それにマッチした形で、支部長はほとんど地元採用となっています。

――― 沖縄県における加入状況について教えてください。

沖縄支部の概要としては、加入者数561,000人で県内人口約40%、事業所数は、21,000事業所です。中小企業がほとんどで、10名以下で70%、50名以下で95%を占めており、標準報酬月額235,000円(全国平均284,000円)、保険料率:9.95%(全国平均10.00%)となっています。保険料率は医療費の実体に合わせて、各支部ごとに異なり一番高い県と低い県では、0.54%の違いがあります。沖縄支部一人当たりの医療費は、年155,644円で、全国で一番低い医療費となっています。元気で医療費を使わなくて済めばベストですが、どう判断するか迷うところです。保険料率は今のところ全国平均を下回っています。

沖縄県の働き盛り世代の健康状態の悪化は深刻。

――― 協会けんぽとして、新たな取り組みや現在の課題などがありますか?

沖縄県における健康状態の課題としては、都道府県別平均寿命ランクの低下が挙げられます。かつては男女とも1位でしたが、直近では男性30位、女性3位となっています。そして20歳~64歳未満の死亡率は男女ともにワースト1位、その原因のひとつである肥満度比率(メタボ含む)は男女ともワースト1位、定期健康診断有所見率も男女ワースト1位です。かつては長寿地域、温暖な環境が良いということをアピールしてきましたが、それがこのような結果になると、観光業などの経済基盤にも影響し、長寿ブランドを今後どうやって復活していくかという点が重要な課題です。

働き盛り世代の生活習慣病を原因とする健康状態の悪化は深刻な問題で、沖縄県としては、相当危機感を持っており、沖縄県主導で70余の機関、団体を網羅した「健康長寿復活おきなわ県民会議」を平成26年4月に設置し、各機関、団体で取り組み中です。沖縄支部としても加入者の健康づくり、疾病予防、重症化予防、医療費適正化に対して重点的に力を入れています。健診受診推進としては、まちかど健診(ショッピングセンター、公共施設17か所で実施、受診券5万通送付)を進め、低料金で気軽に受けてもらえるよう取り組んでいます。そのほか、企業へは健康経営推進として、「福寿うちな~健康宣言」を呼びかけています。行政や関係先とも連携してイベントや研修会において健康づくり推進活動を行っています。医療費適正化の項目も数多くあり、ジェネリック医薬品の使用推進もそのひとつで、29年3月で使用率81.3%(全国1位、全国平均70.4%)を達成しました。

――― 健康保険の活用について、どのような点をおすすめしていますか?

一番は健康診断の奨励です。生活習慣病予防健診は人間ドックに近い検査項目で行っており、本人負担は8,000円ほどで受けられます。被扶養者には特定健診が利用できます。その中でメタボに該当する方々には、無料で特定保健指導を行っており、短期間で改善も見られていますので、ぜひ活用していただきたいです。

健康経営への取り組みが今後の課題

――― 支部長として今後のビジョンについてはいかがですか?

まずは、働き盛り世代の健康の改善、それに向けて事業主と従業員の皆様にいかにして啓蒙していくか、そして健康経営への取り組みを各企業にアピールし、社内での仕組みを作り、いかに効率よく実践してもらうかも課題です。経営者も従業員も含めて、長期的なビジョンで健康経営に取り組んでいくことが必要です。また、これからは病気の方の復職や今後の勤務のあり方などもひとつの課題です。復職した方が安心して働ける環境作り、就業時間内で治療が可能な体制を作ることも考えていかなければいけなくなっていきます。

――― 宮里支部長の個人的な健康管理法や、気をつけている事などがありますか?

私は、ここ10年ほど一日平均8,000歩を目標にウォーキングしています。通常の仕事の中では歩く時間があまりないので、仕事帰りに歩いたり、電車では立ったり、週末のゴルフの時にも歩くことを心掛けています。また職場ではラジオ体操を毎日実施しています。食事もこの4~5年、炭水化物を減らし、最近は適量飲酒を心掛けています。

宮里支部長、お忙しい中ありがとうございます。沖縄県の働き盛り世代の健康改善や、健康管理の取り組み、啓蒙活動の推進を願っています。

全国健康保険協会 沖縄支部(協会けんぽ)
支部長 宮里 博史 氏

全国健康保険協会の主な業務
➀都道府県支部ごとの保険料率の設定
②現金給付の審査・支払い
③加入者の健診・保健指導の実施、健康づくり活動
④医療費の適正化のための業務と活動
(レセプト点検、ジェネリック医薬品使用推進など)
⑤医療費、高齢者医療制度への拠出金の支払いなど